最近は矯正をされる患者さんが増えてきています。それは小学校高学年以上からだけではなく、低学年からでも、クラスに必ず一人は矯正をしている子がいるようです。このようにあまり珍しくなくなってきた矯正治療ですが、患者さんにとってはまだまだ分からないことが沢山ありますよね。そこで、そんな患者さんの疑問にお答えするために、詳しくご説明します。一度目を通してみて、他に分からないことや、もっと詳しく聞きたいことなどありましたら、遠慮なく担当医の方へお尋ねください。


矯正を始める動機として最も多いのは、やはり見た目の問題です。
日本では、見た目の問題だけで矯正をするのはまだ少し抵抗がある様ですが、欧米では審美的な障害を治してより美しくなることは、当然のことになっています。日本でも徐々にそういう風潮が広まりつつあります。
矯正で歯並びが綺麗になり、その後の人生が素晴らしいものになったとおっしゃる方は大勢いらっしゃいますし、小さな子供さんでも歯並びに対して劣等感を持っていることもあるようです。歯並びを綺麗にすることによってこういったコンプレックスを取り去って、幸せな人生を送っていただくのも矯正治療の目的のひとつです。
そしてもちろん矯正治療の目的は、見た目を綺麗にすることだけではありません。歯並びが悪いとこんな障害が起こってきます。

咀嚼機能障害(食べ物がうまく噛めない)
これは当然のことですが、歯並びが悪いとものがうまく噛めません。同じものを食べても歯並びが綺麗な人より食べるのに時間がかかってしまいます。

発音障害(言葉がはっきりしない)
歯並びが悪いと発音にも影響します。アメリカで矯正が盛んなのは、見た目の問題もさることながら、綺麗な歯並びをしていないと綺麗に発音できないからです。
これからの国際社会に向けて英語はますます必要になっていきますが、歯並びが良くないと音が抜けてうまく発音がしにくく、悪い歯並びを放っておくと、いつまで経っても英会話がマスターできないということにもなりかねません。

虫歯になりやすい
歯並びが悪くてデコボコだと歯ブラシが届きにくく、歯垢も溜まりやすくなります。それだけ虫歯になりやすく、口臭の原因にもなります。また、成人になると歯槽膿漏の重要な原因の1つにもなります。

歯槽膿漏になりやすい
虫歯と同じ理由で、歯並びが悪いと歯槽膿漏にもなりやすく、歯の寿命も短くなってしまいます。

入れ歯やブリッジが作りにくい
もし何らかの理由で自分の歯を失ってしまったら、元の歯並びが綺麗でないと、入れ歯やブリッジがうまく作れません。
当法人では開院当初より矯正治療をスタートしており、最近では歯を抜く事なく矯正が出来る非抜歯矯正に取り組み、多くの患者さんに喜んでいただいています。今世界で最先端の矯正テクニックはMBT矯正で、日本では1995年より講習会が始まり、現在世界はもちろんの事、日本でも熱心な開業医や国立大学病院において広がってきています。特徴は、見た目はもちろんのこと、負担がほとんどかからない力で歯を動かすため、矯正治療中も終了後も顎関節症等の為害作用を起こさない事です。米国では、このMBTテクニックの創始者マクロフリン先生とその師であるロステクニックのロス先生の両テクニックを70%を越える矯正科が行っています。当法人はこのMBT研究会の会員です。
このような方もおどろくほどきれいな歯列になります。
【術前】
 

【術中】
 
 
 
 

【術後】
 
 
 


出来れば矯正のために歯を抜きたくないものです。当法人へお越しの患者さんは、ほとんどの方が抜歯なしで矯正を行っております。

非抜歯矯正の例
 
 
 
  この様に前歯にスペースが足らない場合、臼歯を奥に移動させる事により出来たスペースに前歯をきれいに並べることができます。   この様な装置を用いることもあります。  


大人になっても矯正は可能で、年齢制限はありません。ただし、骨の成長が終わってしまっているので、上下の顎の骨にアンバランスがある場合には、外科矯正といって顎の骨を切る手術をして大きさを揃える必要があります。従ってこの場合、外科矯正と矯正治療を組み合わせて行います。当院では、口腔外科専門の先生と連携して行います。顎の骨の大きさがある程度揃っている場合には、歯を動かすだけで治療ができます。ただ、その場合でも期間は1年半〜2年かかり、多数の歯を動かす場合は2年〜3年かかります。


矯正の装置が目立つのは、どうしても抵抗がありますよね。
その場合には、次の2つの方法があります。
少し費用が高くなりますので、担当医にご相談ください。



セラミックブラケット矯正の例


ほとんどの方が、永久歯の全部生え揃う12〜13才位より始めて、治療期間は1年半から2年で、その人の顎の骨の成長がほぼ終わる頃、終了になります。つまり男の子では15〜16才くらい、女の子では14〜15才くらいです。それでは永久歯が生え揃ってから治療を開始した方が、治療期間が短くて済むのかというと、そうではありません。歯並びや咬み合わせが悪くなるのは、もちろん歯自身が原因となっていることもあるのですが、上の顎と下の顎のアンバランスが原因となっていることも多いのです。例えば日本人によく見られる受け口や、上顎に対して下顎が左や右に斜め横にずれて(偏位)顔を正面から見ると歪んで見えるのは、ほとんどが上の顎に比べて下の顎が大きくなりすぎたり横にずれた様になっているのが原因です。いったん成長が終わってしまえば、顎の大きさにアンバランスがある場合は、外科矯正といって顎の骨を切って調整しなければなりません。ところが、第二成長期以前の小さい頃から矯正を始めた場合には、顎の骨の成長をコントロールできるので、骨の大きさに不調和があるような場合でも、大部分の方が顎の骨を切るような手術をすることなしに、綺麗に治すことができます。

早期治療の例
 
 
 
  下顎が右へ偏位している場合、早期から治すことが大切です。   この様な装置を入れ、上顎の歯並びを広げると、上下の歯並びのバランスが正常となり、結果として下顎が偏位して成長するのを防ぐ事が出来ます。(バータイプも有)  

このように顎の骨の大きさにアンバランスがある、もしくはアンバランスが起こりそうな場合は、早く始めるほど効果があります。明らかに骨の大きさにアンバランスがある場合には、5才から始めても早すぎるという事はありません。この様な場合は治療期間が長くかかりますが、その代わり12才位までは来院をしていただく回数は少なくて済みます。
15才以降、顎の発達も終わった直後で矯正を始めた時には、上下の顎の骨のアンバランスがそんなに大きくない場合は、だいたい1年半〜2年位で終わります。
20才位からの成人矯正の場合は、骨が硬くなり、歯を動かすのに多少時間がかかるので、2年〜3年程となります。
不幸にして顎の成長がほぼ終わる頃にすでに上下の顎がアンバランスな場合は、外科と矯正の共同作業となります。私共は、大学などの口腔外科と協力して矯正を行っております。この場合、期間は外科にかかった分、2〜3ヶ月長くなります。